●7000円が1680円に (最初っから安くしてよ)

時代の流れにあわせ、住んでいるマンションにも、光ケーブルを引き込む
ことにしました。

ある朝、N社から見積書がFAXされてきた。直後に電話が鳴る。
「ケーブルの引き込みと配線設備の工事、諸々含めて 200万です。」

T社の見積は240万だった。まずまずの所だろう。でも納得いかない。
「慎重に判断したいので、少しお時間下さい。」と言って電話を切る。

T社に電話をかける。
「某N社は200万だって。もっと安くできるかもしれないねぇ。」

すると担当いわく、
「ここだけの話、160万にします。如何ですか?」

『ずいぶん、あっさり引くものだなぁ』
「わかりました、前向きに検討します。」と言って電話を切る。


当初は、マンションの管理会社を介して概算を出してもらっていた。
いつまで経っても音沙汰が無く、やっと出てき金額に目がくらんだ。

話にならない。
理事会では、私に交渉役を一任することにした。
IT関連の仕事をしているという事で。(インフラは詳しくないんだけどなぁ)

責任がのしかかる。
あまり費用がかかると、居住者の管理費を値上げせざるを得ないからだ。

大手3社に連絡を取り、見積をとる。
S社はべらぼうな金額だったので、T社とN社との交渉が続いた。


T社が160万になった事を告げると、しばらくして N社担当が口を開く。
「弊社は、従来より公共事業の一環として インフラを整備してきました。
 ケーブル工事と配線設備は、これに該当する事ですので 無料 にします。」

『えっ。そうなの?』

まぁ、居住者がまとめて加入するから、毎月のサービス料収入も大きい。
元は取れると、判断したのだろう。

念のため、T社に掛け合う。

「そうですか。N社は初期費用なしですか。ちょっと技術と調整します。」
調整?

「これから技術のものと伺います。お時間宜しいですか?」
何を知りたいのかわからないが、私もマンションの管理室へ向かう。

到着すると、既に管理員と T社の技術者が あれこれ話している。

技術者が営業担当に耳打ちする。
「そうか。よしっ!」小さくガッツポーズをしているのが伺える。

調べていたのは、(マンション竣工当時から置いてある)専用サーバとADSL
機器だった。これをどこまで流用できるかを調べていたのだ。

「こうさせて頂けますか。もちろん居住者の方には 弊社から説明します」

T社担当はメモ用紙に、簡単な図を書きながら説明する。
要するに、既存の配線設備まで光ケーブルを引き込もうということ。
そこから利用する人だけ、配線をADSLから 光に繋ぎ替えることが可能だ
という。

通常、光ケーブル用の配線設備は、ADSLの機器とは別に設ける事になる。
しかし設備の状況によっては、併用ができる場合があるらしい。
それを調べにきたのだった。

結局、初期費用0円で工事をしてもらうことになった。
居住者負担も、それまで管理費に含め徴収していた1680円を、そのまま据置き
にすることになった。

もし交渉せずに、言われるまま受けいれていたら、世帯あたり5千円強の追加、
合わせて、月々7千円の負担になる所だった。

言ってみるものです。


●満足を売ろう

光ケーブルを敷設するには、実際に相当な経費がかかります。
工事機材もさることながら、工事担当、技術者、管理者、交通整理、、、
人件費もばかになりません。

では、この費用はどこから捻出するのでしょう?
上記に記載したとおり、月々のサービス料から埋め合わせする事もできますが、
だからといって、それを基本にすると、サービス料自体がとんでもない金額に
なりかねません。

ですので、どの会社もそうですが、見積を出す際は、実際かかる経費の数倍の
金額を呈示するのです。

そうすれば、すんなりOKを出してくれるお客様が多い程、わがまま(私?)な
お客の要望にも こたえる事ができるのです。

えっ? 不公平だって?

ビジネスは、金額的に不公平だったりしますが、満足感は公平であるべきです。

前回、価格は相対的なもの と言うお話をしました。
これを販売をするという側面からみると、如何に多くのお客様に 満足して
もらえるか を考えなくてはなりません。


例えば、原価50円のパンが10個あったとします。いくらで売りますか?

Aさんは、80円で売り出しました。
半分の5個売れたところで 時間も無くなり、残りは半額40円(原価われ)に
して、3個売れました。
売上は、80×5+40×3=520円。粗利はわずか20円ですね。
最悪です。食事は残った2個のパンを食べる事になりました。

Bさんは、まずそのパンが食べたい人を探しました。
3人見つかり、各々に120円で買ってもらいました。
のこりは、半額の60円にして売り切れました。
売上は、120×3+60×7=780円。粗利280円ですね。

違いがわかるでしょうか。

Aさんは、パンの価値を80円と決めて売ろうとしたのです。

Bさんは、120円でも食べたいと思う人を探して売ってあげました。
そして残りは、安く買いたい人に売ってあげました。


Aさんは、決めた値段でそのパンを買ってもいい人だけをターゲットに
してしまったので、結果的に購買層が少なく、売れ残ってしまいました。

Bさんは、まずパンが好きな人を探して、ある程度の利益が確保できる
金額で買ってもらいました。
買う人は、好きなものを売りに来てくれたのですから、よほど値が張ら
ない限りは、喜んで買ってくれます。

残りは、原価と若干の利益が出ればいいので、安く売り出します。
これも、お得に思って買ってくれる人がいるので、喜ばれます。


Aさんは、金額を公平に考えました。
Bさんは、満足感を共有することを考えました。

金額の設定も、時と場合によって、慎重に決めなければなりませんが、まずは
どうしたら より多くのお客様に満足を与えられるかを 考えることが先決です。

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