●すごい量をこなす
ガラガラ、ガラガラ。大きな音とともに、配送係が台車を押してきた。
「ここ置いときまーす。よろしくー。」と忙しそうに去っていく。
雑誌や写真集の原稿と、対のフィルム(ネガ)が、ページ毎の透明な袋に入って
積まれている。
リーダーが積まれた袋をひとつずつ確認しながら、メンバーに振り分ける。
グループは6〜7人で構成され、リーダー机が通路側、それに続けて向かい
合わせにベテランの机、その隣に中堅。窓際に新人(私)が並ぶ。
「これ今日の割り当てな。」と、振分けられた束が中堅さんから手渡される。
『どさっ』今日もすごい量だ。
といっても、ベテランさんの半分もない。
しかし呑気にやろうものなら、間違いなく終電を逃してしまう。
『よし!!』気合をいれて作業にとりかかる。
しかし..2時間もすると、時折 うつら、うつら。
集中力は、そうそう続かない。
「そういう時は、立ってやるんだよ!」と、中堅さんに戒められる。
「すみません。」と言って、しばらく立ちながら作業を進める。
ふと、ベテランさんの方を見ると。
『すごい...』既に私の3倍くらいの量を仕上げている。
この仕事は、基本給+(ミスなく仕上げたページ数による)歩合が支払われる。
なので、ベテランさんは、すごい金額を稼いでいることになる。
ある日、喫煙所で、ベテランさんと居合わせたので 聞いてみた。
「ミスを出さないのは神経使いますね。量をこなすコツってあるんですか?」
「コツなんかないさ。手順はすべて君に教えたとおりだよ。
量をこなすには、手を早く動かせばいいだけさ。」
「でもミスが増えますよね。」と言いながら、タバコを差し出す。
「ミスはだめだ。キチンとやりながらでも、もっと早くできるもんだ。
とにかく 手を動かせ、考えてないで、早く動かす事に専念するんだ。」
いつの間に火をつけたのか、タバコを吸っている。..早い。
●手を動かせ
ものづくりの仕事は、品質が要求されるので、きちんと仕上げるためには
どうしても時間が かかってしまいます。
しかし、品質を落とすことなく、早く仕上げる事ができるほど、人件費が
抑えられるので、結果として受け取る報酬が増える事になります。
私が言われたのは、「考えてないで、手をうごかせ」ということ。
ついつい、段取りを考えてから取り掛かろうと考えますが、時間の無駄です。
パターンが決まっているか、幾つ通りかの組み合わせであれば、頭で考える
より、体が覚えていることってあるものです。
私の場合、覚えるのが苦手でしたので、パターンごとに、調子の合う歌を
口ずさみながらやりました。
「森のくまさん」とか「まいごの子猫ちゃん」とか^^
そうすると、一曲歌い終わると同時にひとつの作業が完成していきます。
慣れてくると、少しずつ歌うテンポが早くなってくるのですが、作業を進める
手の動きも早くなってくるんですね。
それで、テンポの早い曲に変えます。
「ガッチャマン」とか「ゲッターロボ」(古いですねー^^)
それで、ガンガン♪調子に乗ってこなしていけるようになると、席替えです。
新人さんが入ってきて、一通り教えてあげます。
本人は一生懸命。でも、『ぎこちない』...最初はそんなもんです。